読書メモの本棚
宙わたる教室

宙わたる教室

伊与原 新 文藝春秋 2026年3月4日

感想

テレビドラマが話題になっていたから、これは読まねばと思って手に取りました。文庫本も出ましたしね。80年も生きていると、若い人たちの青春というものを忘れかけていますが、この本を読んでそういう時代があったことを思い出させてくれました。 定時制高校の生徒たちが科学の実験に真摯に取り組む様子が本当に素晴らしい。年をとった身としては、あんなふうに何かに夢中になれる心情が羨ましくもあり、頼もしくもあります。火星のクレーター再現という地味だけど奥深い実験を通じて、生徒たちの人間関係が少しずつ変わっていく過程が丁寧に描かれている。 著者の人物描写の力量には感心しました。それぞれが異なる事情を抱えた生徒たちが、教室という限られた空間で互いにぶつかり、支え合う。そこに生まれる小さな奇跡というのが、説教くさくなく自然に描かれているところが良い。定時制というテーマも現代的で、あらゆる年代が楽しめる青春小説だと思います。話題作というのは伊達ではありませんね。