感想
「1リットルの涙」の後日譚として手に取りました。母親の視点から綴られた10年間の闘病記録というコンセプトは興味深く、子を見守る親としての心情を深掘りする内容を期待していました。 実際に読んでみると、愛する娘を失う悲しみと、その過程で感じた生きることの尊さについては誠実に書かれています。ただ、前作の感動的なインパクトを念頭に置くと、やや物足りなさを感じるのは否めません。記述が時に感情的になり過ぎて、客観性を欠ける箇所も散見されます。 自営業として人生経験を積んできた身として、人間ドラマには一定の評価をしますが、文体に洗練さが欠けているように思います。感涙ものとしての装置が前面に出過ぎており、より深い思索の領域に到達しきれていない。難病との向き合い方について、もう少し普遍的な視点があれば良かったでしょう。 決して悪い本ではありませんが、評価の高い人文・思想書の水準と比べると、この一冊は中程度の価値に留まるというのが率直な印象です。