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電脳国文学

電脳国文学

漢字文献情報処理研究会 好文出版 2000年10月1日

デジタル時代における言語と文化の関係を探究した興味深い一冊だ。コンピュータサイエンスと日本文学という一見相容れない領域を結びつけようとする試みは、自営業の傍ら人文系の著作に親しんできた私にとって非常に刺激的である。 著者の問題提起は明快で、テキスト処理技術の発展が従来の文学研究にもたらす可能性を具体的に示している。大規模言語データの分析手法や自然言語処理の応用例が、古典文学の解釈にどう活かせるかといった視点は、目新しく且つ説得力がある。 もっとも、技術的な詳細部分では若干の説明不足を感じる箇所もあったし、実装面での課題についても、もう少し掘り下げた議論があれば完璧だった。しかし、このような領域横断的なアプローチは今後ますます重要になるだろう。多くの人文系読者に、デジタル思考の価値を再認識させる良質な入門書として推奨したい。知的興奮を感じさせる一冊である。