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告白

告白

湊 かなえ 双葉社 2010年4月1日

湊かなえのデビュー作『告白』を遅ればせながら読了した。本屋大賞受賞作とはいえ、長年の読書経験の中で改めて手に取ってみると、その完成度の高さに驚嘆させられた。 この作品の秀逸さは、何といっても叙述トリックと視点の巧みな構成にある。教師の告白で始まり、級友、犯人、犯人の両親と語り手が次々と替わることで、単一の事実が多面的に照射される。それぞれの視点を通じて見える真実が異なり、読み手は自らの予断と偏見と直面させられるのだ。 自営業で人間関係の複雑さを見つめてきた身としては、この物語が問いかける「正義とは何か」「加害と被害の本質は何か」という問題が極めて現実的に感じられた。単なるミステリーの枠を超えた、深い人文的問題提起がここにはある。 衝撃的というより、むしろ静かで冷徹な描写が心に残る。この一冊との出会いに感謝したい。多くの読者に支持された理由が腑に落ちた傑作である。