慎重に評判を確認してから読むタイプなので、本屋大賞受賞作で多くの好評レビューがあったため手に取りました。読んで正解でした。 この作品の秀逸さは、何といっても視点の切り替えにあります。同じ事件を異なる立場の人物が語ることで、事実が層状に積み重なり、読み進めるほどに事件の本質が明かされていく。教師、生徒、犯人、その家族……それぞれが抱える事情や心情が徐々に浮かび上がり、単純な善悪では判断できない現実の複雑さに直面させられます。 39歳という年代で読むと、親としての視点、教育現場の問題、そして人間関係の難しさがより深く響きます。特に母親の気持ちの部分では、感情的になるほどでした。 後半の展開は確かに衝撃的で、読者に強い問題提起を投げかけます。その結末について賛否あるのは理解できますが、これほど考えさせられた小説は最近ありません。装甲化されていない心で向き合う価値がある一冊です。騎士道的な「正義」を求める方より、人間存在そのものに向き合える人に特におすすめしたい作品です。