莉子の本棚
木曜日にはココアを

木曜日にはココアを

青山美智子 宝島社 2019年8月6日

このお話は本当に素敵な一冊でした。川沿いの桜並木にたたずむ喫茶店を舞台に、東京とシドニーをつなぐ十二色のお話が織りなされているなんて、何ともロマンチックではありませんか。 読み始めたときは、卵焼きやココア、ネイルといった日常の小さな出来事がどのように繋がっていくのか、正直なところ想像できませんでした。ところが、ページをめくるにつれて、その一つ一つが丁寧に編み上げられ、やがて一つの大切な物語へ収束していく様子に引き込まれました。著者の優しいまなざしが感じられます。 年を重ねた私たちだからこそ分かる、人と人との繋がりの大切さ、そして人生の中に隠れている温もりが、これほどまでに静かに、そして力強く伝わってくる物語は珍しいと思います。決して派手ではないけれど、心にそっと灯がともるような読後感。ボランティアの現場でも感じる、人間関係の微妙な美しさがここにはあります。 文庫本という手軽さも相まって、これは大切な人にもお勧めしたい一冊です。