読書三昧の本棚
アルプス席の母

アルプス席の母

早見 和真 小学館 2024年3月15日

話題の新刊ということで手に取ってみたのですが、これは本当に良かった。高校野球を題材にしながら、母親目線で描く視点がいかにも新しい。 息子の夢を応援するために一緒に大阪へ移住するという設定だけで既に引き込まれてしまいました。自営業をしている身としては、人生を大きく変える決断をする覚悟というものが、ひしひしと伝わってくるんです。 著者は前作『ひゃくはち』で補欠球児の葛藤を描いたそうですが、今回の作品も同じく誰もが見落としがちな「脇役」の人生に光を当てている。甲子園を目指す選手たちはもちろんですが、その背後で揺らぎながらも支え続ける母親のリアルな心情描写が素晴らしい。不慣れな土地への不安、厳しい父母会のルール、息子の変化……こうした細部が胸に迫ってきます。 年を重ねるにつれて、親として子どもの人生にどう向き合うかということは、他人事ではなくなってきました。この小説は単なるスポーツ小説ではなく、深い人間ドラマとして心に残りました。多くの人に読んでほしい一冊です。