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殺人の門 上 新装版

殺人の門 上 新装版

東野 圭吾 KADOKAWA 2026年2月25日

感想

松本清張の作品を読むような気持ちで手に取りましたが、これは本当に引き込まれてしまいました。人間の心の奥底に潜む暗い感情を、これほどまでに丁寧に描いた小説は久しぶりです。 主人公・田島の人生が、たった一人の同級生との出会いによってどんどん狂っていく過程が、ひとりごとを聞かされているような感覚で迫ってきます。いじめ、貧困、孤立——次々と襲いかかる不幸が、やがて一つの強固な願望へと結晶していく。その心理描写がなんともリアルで、時に不快ですらあります。でもその不快感こそが、この物語の力なんだと思うんです。 文庫本のちょうどいいサイズ感も好きで、通勤時間に少しずつ読み進めるのが習慣になりました。上巻だけで既にここまで惹きつけられるんですから、下巻がどうなるのか、もう待ちきれない気分です。人間の業深さについて、改めて考えさせられる傑作だと言えます。