taroの本棚
伊能忠敬

伊能忠敬

童門 冬二 河出書房新社 2014年2月6日

感想

人生で最も輝く時期は必ずしも若い頃とは限らないという思いを、この本は見事に体現している。伊能忠敬という人物の存在を、恥ずかしながら本書で初めて詳しく知ったのだが、五十五歳で家督を譲った後、さらに人生の第二章を切り開いたその行動力には本当に圧倒される。 管理職という立場で若手を指導する中で、「定年までの道筋」という枠を多くの人が引いてしまう光景を見てきた。しかし忠敬は違う。自分のやりたいことを見つめ、身分の壁さえ乗り越えて、正確な日本地図という大事業に人生を注ぎ込んだ。その過程の数々の困難、人間関係の軋轢、天文学への研鑽——すべてが丁寧に描かれている。 後年の人生こそが人間の本当の価値を問うという、そういうメッセージが静かに心に響く。読んでいて思わず背筋が伸びるような、そんな一冊だ。忙しない日常の中でも、ぜひ気軽に手に取ってみてほしい。