現象学とサステイナビリティの関心の高まりに背中を押されて手に取った一冊だが、期待以上の充実度だった。著者が徹底して個々の社会現象の「見え方」に向き合う姿勢は、評論のような浮遊感を避け、一定の説得力を持っている。 特に印象的だったのは、ハイデッガーやメルロ=ポンティの議論を社会学的問題へ応用する際の丁寧さだ。理論の輸入に終わらず、日本の社会状況と照らし合わせながら思考が展開される点に、筆者の誠実さが感じられる。フリーランスとして社会の周辺に身を置く身にとって、「行為者の視点」を重視する現象学的アプローチは、かなり実存的な共感をもたらした。 もっとも、後半にかけて概念の密度が高まり、予備知識が限定的な読者には読み込みが要求される。だからこそ何度も立ち返り、書き込みながら読む価値のある内容だと言える。社会学を深く学びたい人間にとって、一度は向き合うべき重要な問題提起が詰まっている。