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俳諧随筆蕉門の人々

俳諧随筆蕉門の人々

柴田宵曲 岩波書店 1986年1月1日

感想

岩波書店の古典文学シリーズとあれば、まず手に取ってみるのが常なのだが、本書は期待値とのギャップが大きかった。 蕉門の人々の足跡を辿ろうという意図は理解できるが、随筆という形式が仇となっているのか、記述が散漫で焦点が定まりにくい。各人物への深掘りが浅すぎて、江戸俳諧の歴史的背景や師弟関係の複雑さまで十分に伝わってこない。 特に気になったのは、編成の問題だろう。テーマごと、あるいは時系列で整理されていれば読み進めやすかったはずだが、唐突な場面転換が多く、初見の読者には追いづらい構成になっている。評価の高い同社の他の新書類と比べると、編集の丁寧さが物足りない。 松尾芭蕉の門弟たちの生涯や創作姿勢そのものには興味深いエピソードが眠っているはずなのに、それを活かしきれていない感がぬぐえない。古典研究の専門家向けには有用かもしれないが、文化教養として俳諧史に親しみたい層には、別の著作をお勧めしたい。