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みつば百貨店おりおり便り

みつば百貨店おりおり便り

久賀 理世 / 青井 秋 集英社 2026年3月18日

感想

昭和初年の銀座を舞台にした、百貨店での仕事を通じた成長物語です。主人公の翠が憧れの職場で奮闘する姿は、読んでいて励まされるような心地よさがありました。 広報誌の編集という仕事の中で、売り場の秘密や人間関係のドラマが紐解かれていく構成は工夫されていて、時代背景も相まって雰囲気が良く出ています。翠のコラム執筆を通じて百貨店の様々な側面が見えるという、物語と舞台設定がうまく合致しているなと感じました。 ただ、各エピソードが短編的で、全体としてやや散漫な印象は拭えません。「売り場荒らしの正体」や「百貨店の怪談」など気になる要素があっても、物語全体への深い波及を感じにくいというか。もう少し翠の個人的な成長や周囲との関係の変化が丁寧に描かれていたら、もっと引き込まれたと思います。 日常生活で時間をかけてゆっくり読むぶんには心地よい本です。気軽に楽しむ読書におすすめですが、深く心に残る作品を求める方には物足りないかもしれません。