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ビバリウム Adoと私

ビバリウム Adoと私

Ado / 小松 成美 KADOKAWA 2026年2月26日

Adoという現象を、これほど丁寧に追跡した作品があったかと思う。小松成美による3年に及ぶ取材の力が感じられる。 正直なところ、音楽業界の成功譚は往々にして美談に終わりがちだ。だからこそ慎重に読み始めたのだが、この本は違った。クローゼットでの孤独な制作活動から、不登校時代の葛藤、そして現在の躍進まで——それらが「ビバリウム」という象徴的なタイトルのもとに繋がっていく構成が秀逸だ。 フリーランスである自分としても、小さな空間から世界へ広がっていくという軌跡に共感するところが多かった。彼女がどのように自分の声と向き合い、何を支えにしてきたのか。その心理的な過程が、ノンフィクション小説という形式だからこそ、恣意的にならず描けているように感じる。 ただ、著名人の伝記にありがちな「ここまで詳しく知る必要があるのか」という部分も若干ある。それでも全体としては、Adoという人物の本質に迫った稀有な一冊だと思う。音楽ファンだけでなく、創作に携わる人間全般に読む価値がある作品だ。