アガサ・クリスティの黄金期の作風を現代に再現したという触れ込みに、期待を込めて手に取りました。確かに古典ミステリの魅力をよく理解した作品ではあるのですが、正直なところ「すべてのミステリファンへの最高のプレゼント」というキャッチコピーほどの感動は得られませんでした。 1955年の村を舞台にした謎解きの構造自体は緻密で、関心を持って読み進められます。登場人物たちの背景描写も丁寧です。ただ、既存のクローズドサークル型ミステリのテンプレートに沿った展開という印象が否めず、驚きや新しさといった点では少し物足りません。 アティカス・ピュントという名探偵も、確かに懐かしさを感じさせる造型ですが、だからこそ既視感も強くなってしまいます。子育てで忙しく、たまの読書時間を大切にしている身としては、時間をかけた分の発見があってほしいと考えてしまうのかもしれません。 古典ミステリの熱心なファンには評価が分かれるところだと思いますが、新しい時代のミステリを求めている読者にとっては、上巻の時点ではまだ判断が難しいというのが率直な感想です。