京極堂シリーズの第一弾をようやく読みました。こういう作品は評判の良さを見てから手にするタイプなので、今さらですが。 正直なところ、最初は複雑な登場人物と設定に少し戸惑いました。20ヶ月も身籠ったままという設定だけで既に非現実的で、普通の推理小説とは違う世界観なんだなと感じます。でも読み進めるうちに、その奇想天外さがこの作品の魅力だと気づきました。 古本屋にして陰陽師という京極堂というキャラクターが本当に素敵です。謎を解く過程で、彼の知識と洞察力が徐々に明かされていく構成が見事。関口や榎木津といった周囲のキャラクターも個性的で、彼らの掛け合いを読んでいるだけでも楽しい。 怖い部分もありますし、不可解な現象の説明に納得させられる力があります。「この世には不思議なことなど何もない」という京極堂の台詞がどういう意味なのか、読み終わるとしっくり来ます。 シリーズ第一弾としてきちんと完成された物語になっているので、次巻へも自然と進めそうです。慎重派の私も、続きが気になって仕方ありません。
最近登録された他の本の感想
2026年07月02日
この本を手に取ったのは、SNSで何度も目にした「52ヘルツのクジラ」という表現に惹かれたからです。誰にも届かない声、という意味の深さに、思わず引き込まれてしまいました。 実際に読んでみると、期待以上でした。貴瑚と少年という二人の孤独な存在が、どのように出会い、どのように響き合うのか——その描写の繊細さに何度も立ち止まってしまいました。家族に搾取されてきた女性、虐待を受けた少年という重いテーマなのに、決してどんよりした印象ではなく、むしろ二人が見つけ出す光のようなものが感じられます。 町田そのこさんの文体は本当に美しくて、特に心の内面を描く部分では思わずはっと息を飲むほど。主婦として日々家事に追われていると、ついつい自分の気持ちや考えを後回しにしてしまいますが、この本を読んでいる間は、そういう小さな心の声を大切にしたいと思わせてくれました。 心に傷を持つ人たちが、どのように他者と繋がっていくのか。その過程を丁寧に、そして優しく描いた作品です。強くお勧めできます。
2026年06月26日
何度も目次に戻りながら読み進めてしまいました。こんなに心をかき乱される小説は、久しぶりです。 東日本大震災という重い題材なので、正直なところ読むまで躊躇していたんです。でも、レビューで「生と死の関係を優しく描いている」という評判を見かけて、思い切って手に取ってみることにしました。 実際に読んでみると、想像力を通じて聴くラジオという設定が本当に秀逸です。震災という現実に向き合いながらも、どこか温かみのある物語世界に包まれるような感覚。つらいはずの内容なのに、読み終わった後には静かな希望が心に残りました。 人物たちの声や想いがラジオ電波に乗って私の中に流れ込んでくるような、不思議な没入感があります。短編的なエピソードの積み重ねながら、全体として深くつながっていく構成も見事です。 主婦として日々の生活の中で忙しく過ごしていると、こういった「想像力」の大切さを忘れてしまいがちです。この本は、読者自身の想像力を最大限に必要とする作品。それが、この物語の最高の魅力だと思います。
2026年06月24日
伊能忠敬という名前は歴史の教科書で見かけたことがありますが、実際にどんな人物だったのか、詳しくは知りませんでした。この本を手に取ったのは、レビューで「晩熟の男」という表現が引っかかったからです。 読み始めると、すっかり忠敬の世界に引き込まれました。五十五歳で測量の旅に出発するという人生の選択肢が、これほど劇的で感動的だとは予想していませんでした。養子として家業を立て直し、その後の人生を学問に捧げるという流れが、自然に、そして力強く描かれています。 著者の筆致が丁寧で、忠敬の思考や葛藤がしっかり伝わってくるのが良かった。身分制度の中での軋轢や、学問を追求する姿勢が、当時の社会背景とともに浮かび上がります。地図作成という壮大なテーマも、決して難しくなく、むしろ人間ドラマとして心に響きました。 子育てや家事で日々を送る自分にとって、人生をやり直す勇気、新しいことに挑戦する忠敬の姿勢は、とても励まされるものがありました。慎重に選ぶ私だからこそ、こういう作品に出会えて本当に良かった。強くお勧めできる一冊です。
2026年06月15日
前作『汝、星のごとく』の感動がまだ心に残っているなか、続編の『星を編む』を手にしました。正直なところ、続編というだけで不安もあったのですが、その心配は杞憂でした。 この作品は、前作で語られなかった登場人物たちの想いや背景が丁寧に描かれています。教師・北原の秘めた過去、編集者たちが携わる創作の世界—どの物語も、人が誰かを支え、愛おしむことの大切さを静かに教えてくれます。 特に印象深かったのは、編集者たちが作家を支える場面です。才能と向き合い、時には厳しく接しながらも、相手を信じる姿勢が本当に素敵でした。主婦として家族を支える日々のなかで、「支える」ことの重みと喜びを改めて感じさせられました。 文章は相変わらず美しく、読むたびにほっと息をつく瞬間がある。慎重に本を選ぶ私ですが、この一冊は迷わずお勧めできます。前作を読んでいなくても大丈夫ですが、読んでからなら、より深い感動が得られると思いますよ。
2026年06月14日
子どもの頃、学校のトイレで花子さんの話をこっそり友人としていたのを思い出しました。懐かしの都市伝説をマンガ化した作品ということで、どんな風に描かれているのか興味を持って読んでみました。 想像していたより、丁寧で引き込まれるストーリー展開です。花子さんというおどろおどろしい題材ながら、単なる怖い話ではなく、人物描写がしっかりしているのが好印象。背景設定もしっかり構築されていて、マンガだからこその絵の力で、世界観が説得力を持って立ち上がっています。 ただ、上巻ということで物語がまだ始まったばかりという感じもあり、続きが気になります。心理サスペンス的な要素も感じられるので、次巻以降の展開次第で評価も変わってくるかもしれません。 大人が読んでも十分に楽しめる内容だと思いますが、懐かしい都市伝説の再解釈を丁寧に追いたい方、あるいはマンガで良質なストーリーを求める方にはおすすめできる作品です。
2026年06月09日
最近、本選びに時間をかけすぎていたのですが、このタイトルと帯の惹き文に思わず手に取ってしまいました。DNA捜査システムという設定に、最初は少し理科っぽくて難しいのではないかと心配だったのですが、そんな懸念は無用でした。 物語は想像以上にドラマティックで、一気読みしてしまいました。主人公が自分の名前が犯人として浮かび上がるという状況設定だけで、これほどまでに緊張感を保つことができるのだと感心しました。真犯人は誰なのか、なぜ主人公の名前が出てくるのか、その謎解きが実に上手く構成されています。 テクノロジーを題材にしながらも、人間関係のもつれや信頼といった普遍的なテーマもしっかり織り込まれていて、ただのミステリーにとどまらない奥行きを感じました。登場人物たちの葛藤も丁寧に描かれており、感情移入しやすかったです。 文庫本という気軽に読める形式も良かったですし、適度なボリュームでストレスなく楽しめました。慎重に本を選ぶ私ですが、この一冊は選んで正解だったと思います。エンターテインメント小説としての完成度は高いのではないでしょうか。
2026年06月08日
シリーズ19巻目ですが、新しい読者でも十分楽しめるように丁寧に書かれているのが好感持てます。 今回は北海道の美瑛という舞台で、心霊現象の調査という王道のストーリーなのですが、予想とは違う展開になっていて驚きました。タイトルから推測した内容とズレがあったというか、より複雑な真実が隠されているんです。その仕掛けがとても良く出来ていて、一気読みしてしまいました。 主人公たちのキャラクターが丁寧に描かれているので、登場人物に感情移入しやすいのも魅力です。特に今巻では新しい登場人物との関係性が丁寧に描写されていて、物語に奥行きが感じられます。 ただ、相談を申し込む人物の心理状態がやや複雑で、その部分の描写をもう少し丁寧に読む必要があったかなとは思います。慎重に一度読んでから、二度読みしたくなる作品です。 シリーズを通して安定した面白さを保ち続けているのは本当に素晴らしい。次巻も楽しみです。
2026年06月08日
完全版ということで期待して手に取ったのですが、正直なところ、下巻だけで物語の全容を判断するのは難しいなというのが率直な感想です。 中世の修道院を舞台にした本格ミステリという設定は魅力的で、ウィリアム修道士の推理の過程も興味深く読めました。ただ、知識的な深さと物語の進行速度のバランスが、私のペースには少し合わなかったのかもしれません。記号論やアリストテレス、宗教的な背景知識が随所に登場するので、もう少し予備知識があると、より楽しめたのではないかと感じます。 作者の訂正やメモ、デッサンなどが併録されているのは興味深いのですが、それらを活かしきれていない自分の読み方も影響しているのかもしれません。名作とされる理由は理解できますが、私個人としては「ぜひ誰かに勧めたい」というほどの熱量には至りませんでした。慎重に作品を選ぶ方は、あらかじめ上巻から読んで、自分に合っているか確認してからのご購入をお勧めします。
2026年06月08日
明治時代の啓蒙書とのことで、正直なところ難しい内容ではないかと少し躊躇していたのですが、思い切って手に取ってみて良かったです。 「天は自ら助くる者を助く」という言葉が印象的で、依存や他力本願ではなく、まず自分が行動することの大切さが繰り返し説かれています。300年以上前のヨーロッパの成功者たちの事例が紹介されているのですが、時代は違えど、人間が困難を乗り越えるために必要な思考や行動は普遍的なのだと気づかされました。 主婦として毎日を過ごしていると、ついつい自分の可能性を狭く考えてしまう傾向があるのですが、この本を読むと「自分にもできることがあるのでは」という前向きな気持ちが湧いてきます。文体は古いですし、事例によっては現代にそぐわないものもありますが、その点を差し引いても、人生の転機や迷いの時に勇気をくれる一冊だと感じました。 福沢諭吉の『学問のすゝめ』と並ぶ名著というのも納得できます。
2026年06月07日
読んでから何日経っても、この本の余韻が消えません。各書評サイトで高評価を見かけて慎重に手に取ったのですが、それだけの理由がある作品だったなと実感しました。 多様性を尊重する時代だからこそ見落とされるものがあるのではないか、という問い掛けが、この物語の核にあるのだと思います。三人の登場人物それぞれの視点から見える世界が、真摯に丁寧に描かれています。息子さんの不登校で揺らぐ父親の心理描写は特に胸が締め付けられました。自分の子育ても他人事ではない気がして。 決して読みやすい話ではありません。むしろ構成も複雑で、一度読み終わったあとも「あの場面、こういう意味だったのか」と考え直すことばかり。でもそれがこの小説の力なのだと感じます。社会的な議論もある内容ですが、著者の視点は非常にニュートラルで、読み手にいろいろ考えさせてくれます。 確かに重い内容ですし、万人向けとは言えません。ですが、その分だけ読む価値のある傑作だと思います。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。
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