ゆーきの本棚
ほどなく、お別れです

ほどなく、お別れです

長月 天音 小学館 2022年7月6日

80歳を迎えた今、この本との出会いは実に良いタイミングだったと思う。 葬儀場を舞台にした物語と聞いて、最初は重たいのではないかと心配したが、読み進めるうちに違う世界が見えてきた。著者が夫との別れを経て五年かけて書き上げたという背景を知ると、この作品の深さがより一層理解できる。 主人公の大学生・美空と、毒舌だが心優しい葬祭ディレクター・漆原との関係性が実に良い。二人が訳ありの葬儀に向き合う中で、死とは何か、人生とは何かを問いかけてくる。最近の話題作とあって、感情的な場面が随所にちりばめられており、正直なところ涙ぐむシーンが何度もあった。 人生の終わりに差し掛かった私たちにとって、この本は決して悲しいだけの物語ではない。むしろ、どう生きるかを考え直させてくれる良い機会になる。文庫本という手軽なフォーマットも、気軽に何度も読み返すのに適している。 同世代の方にも、若い世代にも強く薦めたい一冊である。