感想
話題沸騰中の『蜜蜂と遠雷』下巻をようやく読了した。上巻から数ヶ月経っての再開だったが、一気読みしてしまった。 ピアノコンクールという限定的な舞台設定なのに、ここまで人間ドラマを紡げるものかと感嘆する。2次予選を突破した四人の選手たちが、いよいよ最終段階へ向かう緊張感が素晴らしい。それぞれの背景、葛藤、音楽への向き合い方が丁寧に描かれており、単なるコンテスト小説の枠を大きく超えている。 特に印象的だったのは、登場人物たちが音楽を通じて自分たちの人生と真摯に向き合う姿勢だ。完璧さを求める者、失ったものを取り戻そうとする者、純粋に音楽を愛する者——各々の個性が音の響きとして文字で蘇る。恩田陸の描写力には本当に脱帽する。 会社で疲れた身体で読んでいたが、彼らの演奏シーンに引き込まれ、気づけば深夜まで目が離せなくなっていた。ベストセラーになるのも納得の傑作。もう一度上巻から読み返したい衝動に駆られている。