話題になっていたので気になって読んでみたが、これは本当に良かった。ウェブ小説発の作品とのことだが、その出自を感じさせない完成度の高さに驚いた。 下関のラブホテルという舞台設定からして独特なのに、気送管を通じた手紙という物理的な距離感が、二人の関係を象徴するような仕掛けになっている。社会的背景を背負った二人が、限定的な空間で織り成す恋愛は、切実であり、また儚い。会社員として日々現実的な判断をしている身からすると、こういう純粋な感情の揺らぎは忘れていたものをちょっと取り戻させてくれる感覚があった。 キャラクター造形も丁寧で、主人公たちの背景や心情の変化が自然に伝わってくる。特に、互いに傷つけながらも愛していく過程が繊細に描かれている点がいい。あとがきを読むと、作者の創作への向き合い方も誠実なんだなと感じた。 大人だからこそ響く、そういう恋愛小説だと思う。最近は実用的な本ばかり読んでいたけど、久しぶりに小説で心を動かされた。