有島武郎のこの作品集、話題になっているということで手に取ってみました。童話という形式ですが、これは子どもだけのものではありませんね。むしろ大人が読むからこそ、その奥深さが胸に響きます。 表題作の「一房の葡萄」をはじめ、どの作品にも人生の切実さが静かに流れ込んでいます。著者が自らの手で挿絵や装丁を施し、亡くなったお子さんたちへの献辞を添えた—その事実を知ると、この本全体がより一層愛おしく感じられます。 岩波文庫のこの改版は、近代文学を愛する者にとって手元に置きたい一冊です。読み返すたびに、人生における光と影の表現の繊細さに改めて気づかされます。短編ながら、ページを閉じた後も考え続けてしまう、そんな作品たちです。