りくの本棚
もものかんづめ

もものかんづめ

さくら ももこ 集英社 2001年3月25日

さくらももこの原点に迫るエッセイということで、話題になっていたから読んでみました。正直、予想以上に面白かった。 短大時代の謎の食品売り場でのアルバイト体験や、新社会人時代の歓迎会での珍事件など、日常の中の理不尽さを淡々と描写していく筆致が絶妙です。本人が後年の大成功を知っているからこそ、当時の自分をユーモア交じりで観察できているんでしょう。僕も新社会人で職場の不可解な人間関係に戸惑うことがありますが、このエッセイを読むとそういう違和感や違和感の積み重ねって誰もが経験するんだなって思えて、妙に共感できました。 土屋賢二との対談も良い。二人の掛け合いから、創作活動の裏側とか、社会人経験がどう作品に活きているかが垣間見えます。軽めの読み物として気軽に読める雰囲気なのに、実は人生観を問い直させられるようなアイロニーが詰まっている。そういう作家性の源流がこの本には凝縮されている気がします。話題本というだけでなく、本当に読む価値のある一冊でした。