直木賞を受賞したこの作品を手にしたのは、新聞で話題になっているのを見かけたからです。七十を過ぎた身として、人生の重さについて書かれた本には自然と引き寄せられてしまいます。 表題作の「鉄道員」は、本当に心に響きました。駅務員として人生を捧げた男が、娘さんや奥さんを亡くしながらも、駅に立ち続ける—その姿勢の中に、深い愛情と諦観が静かに流れているのです。派手ではないけれど、こういう人生の物語って、年を重ねた者にはよく分かります。 同じ作品集に収められた「ラブ・レター」や「角筈にて」も素晴らしく、浅田次郎さんの筆致は本当に優しい。登場人物たちの喜びや悲しみが、ごく自然な言葉で描かれているので、読んでいて無理がない。 ボランティアで様々な方々と接する中で、皆さんそれぞれの人生の物語を背負っているんだなと感じることがあります。この本を読むと、そうした出会いがより一層味わい深く感じられます。同年代の方はもちろん、若い世代にも是非読んでもらいたい傑作です。