感想
漱石の小説はずっと苦手だったのですが、この本は違いました。エッセイや講演録といった漱石自身の肉声を聞くような気分で、ぐんぐん引き込まれていきます。 出久根達郎さんの選編のおかげでしょうか、難しい思想も分かりやすく、親しみやすく感じられました。漱石が人生についてこんなに率直に、こんなに温かく語っていたなんて。教科書で習った偉大な文豪というイメージが、一気に身近な人間らしい人物に変わりました。 パート勤務で毎日忙しいので、短編ずつ気軽に読める形式も気に入っています。疲れた日の夜でも、「ああ、漱石だってこんなことで悩んでいたんだ」と思うと、なんだか慰められる気がします。知識人の内面を描いた漱石の作品群も、もう一度読み直してみたくなりました。