帝国劇場についての本ということで、手に取ってみました。劇場という舞台を通じて、いろいろな人生ドラマが描かれているのですね。 白杖の父親とのエピソード、劇場に住み着いた少年の話、幸運の椅子の伝説など、短編的なお話がいくつも編まれているようです。劇場という限られた空間に、これだけ多くの物語が存在しているというのは、なかなか興味深い発想だと思いました。 ただ、正直なところ、すべてのお話が心に引っかかったかというと、そうではありませんでした。それぞれのエピソードは味わい深いのですが、全体として「もっとぐっと来てほしい」という気持ちが残りました。パート帰りにさらりと読める気軽さは良いのですが、もう少し腹に落ちる何かがあればなあと。 実際に帝国劇場を知っている世代としては、あの劇場への思い入れもあります。そういう意味では、この本が劇場の思い出を未来に繋ぐという役割を果たしているのは素敵だなと感じました。特別に悪い本ではないのですが、特別に良いとも言えない、そんな印象です。