話題の作品ということで手に取ってみましたが、正直なところ期待と異なりました。 人間の心底に潜む殺意を描くというコンセプト自体は興味深く、同級生との関係が人生を狂わせていくという設定も引き込まれます。ただ、主人公の心理描写が執拗で、読んでいて息苦しさを感じてしまいました。管理職として部下の気持ちや複雑な人間関係を扱う身ですが、この作品の心理分析は深さというより、ただ負のスパイラルをなぞっているように感じられました。 また、上巻という分割形式も気になります。ここまで読んでも物語の着地点が見えず、続きが気になるというより「どこへ向かうのか」という不安だけが残ります。重厚な人文書や思想書をよく読む身からすると、もう少し主人公の思考に哲学的な深みがあれば、単なる暗さの羅列ではなく意味のある問い掛けになったのではないでしょうか。 話題性だけで手を出さず、自分の好みをもっと大切にすべきだと改めて思わされた一冊です。