静かな読書の本棚
対決・開発殺人事件

対決・開発殺人事件

辻 真先 東京創元社 2026年3月19日

感想

この本、いや本当に面白かった。可児キリコという記者が銀座のクラブ潜入から沖縄のリゾートホテルへと舞台を移して巻き込まれる殺人事件。バブル末期という時代背景も相まって、どこか懐かしくも切迫した緊張感が漂っている。 印象的だったのは、事件の謎解きの巧妙さだ。高所恐怖症という設定が伏線として機能していて、その仕掛けに気づいた時の快感。単なるミステリーではなく、時代が生み出した欲望や矛盾が事件の背景に横たわっている。もう一つの話線である牧薩次の別荘地での事件も同じテーマで響き合っていて、バブル期の日本社会を鮮烈に浮き彫りにしている。 文体も読みやすく、ページをめくる手が止まらなかった。このくらいの気軽さで読める長編が好きな身としては、まさに求めていた一冊。三十年以上前の作品とは思えないリアリティがある。今こうしてバブル時代を振り返る年代だからこそ、より一層その時代の空気感が蘇ってくるのかもしれない。傑作です。