感想
開高健ノンフィクション賞受賞作、話題の作品ということで手に取ってみました。シリアの政治情勢と一家族の生活を並行して描くというコンセプトはとても興味深く、選考委員の先生方の絶賛の言葉も魅力的です。 ただ正直なところ、読み進めるのに苦労しました。重いテーマであることは承知していましたが、描写の密度が濃すぎて、途中から感情移入が難しくなってしまったのです。著者が伝えたいメッセージは十分に感じられるのですが、一般的な読者にとってはやや敷居が高い。背景知識がないと物語に浸りきれない場面が多々あり、そこが引っかかりました。 もちろん、これだけの重要な証言を文字として残された著者の功績は大きいと思います。むしろ、この本を通じて多くの人がシリアの現実に目を向けるきっかけになればいいなと。ただ個人的には、もう少し物語としての読みやすさと奥行きのバランスが欲しかったというのが率直な感想です。