感想
定年まであと数年という時期に、この本のタイトルが目に留まった。仕事一筋で駆け抜けてきた人生を振り返るとき、ふと「暇」や「退屈」について考えさせられることが増えたのだろう。著者がスピノザやニーチェといった思想家たちを通じて、人間にとって本質的な問いを投げかけてくるのが実に興味深い。 現代社会の消費至上主義が、いかに我々から充実した時間を奪い取っているか。その指摘は鮮烈だった。仕事に追われながらも、自分たちがいかに気晴らしで埋め尽くそうとしてきたか。この部分を読んでいて、何度も頷かされた。単なる批評に終わらず、どのように生きるべきかという道標を示してくれるところが秀逸である。 文庫本ということで手に取りやすく、哲学的な難しさもほぼ感じさせない。むしろ人生経験を積んだ世代だからこそ、著者の議論の重みが腑に落ちる。退職後の人生設計を考え始めた同世代には特に、強く勧めたい一冊だ。知的な刺激と人生への問い直しが同時に得られた貴重な読書体験となった。