感想
直木賞受賞作というので手に取ってみたが、これは実に見事な傑作だ。16世紀フランスという時代背景を舞台にしながら、権力に立ち向かう一人の弁護士の姿勢が現代にも通じる普遍的な問題を問いかけている。 何より印象的なのは、国王の不当な要求に対して孤立無援の中で王妃の弁護を引き受ける主人公の決断である。田舎の無名な弁護士が、王妃という絶大な権力を持つ相手のために声を上げるその勇気に、思わず引き込まれた。歴史小説とは言え、正義とは何か、法とは何かという根本的な問いが貫かれているのだ。 文体も清潔で読みやすく、複雑な法廷戦を舞台としながらもテンポよく物語が進んでいく。久しぶりに徹夜してしまったほどの面白さである。人文的な教養が深まるのはもちろん、単純にエンターテインメント作品としても秀逸。話題の本として納得のできる一冊だ。同世代の読者にも強くお勧めしたい。