感想
最近、良い随筆集との出会いを探していたところ、この本に辿り着いた。「歓喜」というテーマで薄田泣菫から開高健まで、時代を超えた名随筆を集めた編集に惹かれて手に取ってみた。 読み進むうちに気づくのは、歓喜というものの多様性だ。派手な喜びもあれば、静かな満足感もある。志賀直哉や向田邦子の文章から感じ取れるそれぞれの人生観は、五十八年を生きてきた自分自身を静かに省みさせてくれる。特に吉田健一の「食べものの話、又」など、日常の何気ない瞬間に隠された喜びを丁寧に掬い上げる筆致は見事だ。 何より筑摩書房の文庫本としての装幀が美しい。カバーの装画も品があり、毎日通勤の電車で開くたびに、この本を選んでよかったと思う。一人称という個人的な視点で綴られた文章だからこそ伝わる、人生の豊かさや深さが詰まっている。世の中の流行ばかり追っていた自分にとって、こうした時間を作ってくれる本は本当に貴重だ。