直人の本棚
サラバ!(上)

サラバ!(上)

西 加奈子 小学館 2014年10月29日

西加奈子の記念作品ということで、かねてから気になっていた『サラバ!』をようやく手に取った。予想通り、素晴らしい作品だった。 主人公・圷歩がイラン、エジプト、そして日本へと移り住む経験を通じて成長していく物語だが、単なる海外生活の記録ではない。異文化の中で揺らぎ、時に傷つきながらも、自分の足で立っていこうとする若者の内面が見事に描かれている。 特に印象的なのは、著者が異なる土地や文化との出会いを、決して観光的な視点で捉えていないという点だ。そこに生きる人間の複雑さ、葛藤、喜びが丁寧に織り込まれている。58年生きてくると、人生の岐路がいくつもあったことに気づくが、この作品を読んでいると、そうした決定的瞬間の重みが改めて伝わってくる。 上巻の終わり方も秀逸で、下巻への期待が膨らむ。この年代だからこそ共感できる部分も多い。話題作として注目されるのも納得の傑作だ。