三浦の本棚
箪笥(たんす)

箪笥(たんす)

小泉 和子 法政大学出版局 1982年2月1日

感想

一見地味な題材ながら、思わず最後まで一気読みしてしまいました。箪笥という日常的な家具をテーマにした本ですが、単なる工芸史ではなく、社会経済史としての奥深さがあります。 著者が箱から抽斗への転換という地点に着目した視点が秀逸です。この変化が何を意味するのか、どのような技術革新と社会的需要がそれを支えたのか。丁寧な論証を通じて、歴史の大きな流れが一つの家具の形態変化に凝縮されていることが見えてきます。 何より感動したのは、著者が自ら箪笥を製作し、その記録を巻末に付載しているという点です。理論だけでなく、実際の製作経験を通じて初めて理解できる職人の智恵がある。机上の空論ではなく、手を動かして学んだからこその説得力があります。 会社員として日々現実的な判断を求められる身ですが、こうした根拠のある思考の積み重ねの大切さを改めて感じさせられました。人文科学の良書として、強くお勧めできる一冊です。