春かずら

春かずら

澤田 瞳子

出版社:幻冬舎 出版年月日:2026/01/28

幻冬舎 | 2026/01/28

3.67
本棚登録:7人

みんなの感想

感想

武家小説というジャンルに、ここまで人間ドラマを詰め込める作品があるのかと驚きました。直木賞作家が初めて挑んだという『春かずら』、十二年間の仇討ちという重いテーマながら、随所に人情味や葛藤が溢れていて、ぐいぐい引き込まれます。 特に面白いのは、主人公の清史郎と仇の息子・隼人という、本来なら相容れぬはずの二人の関係性です。剣の手ほどきを通じた師弟関係の中で、感情のもつれが生じる様子が実に丹念に描かれている。江戸時代の侍という枠組みの中で、「矜持とは何か」「仇討ちの本質とは何か」といった問いが自然と浮かび上がります。 管理職という仕事をしていると、正解と思い込んでいた判断が、実は複数の視点から見ると異なる価値観を持つことに気付かされます。この作品はそうした葛藤を、見事に小説化している。ラストの清史郎の決断には、単なる勧善懲悪では割り切れない、人生の奥深さが感じられました。歴史冒険小説として楽しむのはもちろん、大人だからこそ味わえる余韻がある一冊です。

感想

直木賞作家が武家小説に初挑戦という触れ込みに惹かれて手に取りました。仇討ちという重い題材ですが、その中に「人と人の繋がり」という温かみがあり、予想以上に深い作品でした。 十二年間仇を追い続けた清史郎と、その仇の息子・隼人が出会うという設定だけで既に心が揺さぶられます。立場が立場だけに、この二人の関係がどう進むのか目が離せません。江戸時代という時代背景の中で、義理や矜持といった「侍らしさ」とは何かを改めて考えさせられます。 装飾的ではなく、あくまで人間くさい描写が素晴らしい。清史郎の葛藤や、藩内政治という現実的な制約の中で彼がどう決断するのか、その過程がとても丁寧に描かれています。謎解き的な楽しさもありながら、決してそこだけに頼らない。物語として完成度が高いなと感じました。 年を重ねた今だからこそ、こういった深い問いかけが心に響く一冊です。慎重に本を選ぶ私ですが、この作品は期待を上回る仕上がりでした。

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