春かずら

春かずら

澤田 瞳子

出版社:幻冬舎 出版年月日:2026/01/28

幻冬舎 | 2026/01/28

4.00
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みんなの感想

直木賞作家が武家小説に初挑戦という触れ込みに惹かれて手に取りました。仇討ちという重い題材ですが、その中に「人と人の繋がり」という温かみがあり、予想以上に深い作品でした。 十二年間仇を追い続けた清史郎と、その仇の息子・隼人が出会うという設定だけで既に心が揺さぶられます。立場が立場だけに、この二人の関係がどう進むのか目が離せません。江戸時代という時代背景の中で、義理や矜持といった「侍らしさ」とは何かを改めて考えさせられます。 装飾的ではなく、あくまで人間くさい描写が素晴らしい。清史郎の葛藤や、藩内政治という現実的な制約の中で彼がどう決断するのか、その過程がとても丁寧に描かれています。謎解き的な楽しさもありながら、決してそこだけに頼らない。物語として完成度が高いなと感じました。 年を重ねた今だからこそ、こういった深い問いかけが心に響く一冊です。慎重に本を選ぶ私ですが、この作品は期待を上回る仕上がりでした。