鷺と雪

鷺と雪

北村 薫

出版社:文藝春秋 出版年月日:2011/10/07

文藝春秋 | 2011/10/07

4.00
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みんなの感想

直木賞受賞作とのことで期待して手に取りました。昭和初期の上流階級を舞台にした三つの短編ですが、どれも緻密で引き込まれます。 特に印象的だったのは、各編に登場する「ベッキーさん」という人物の存在感。名探偵というわけではないのに、自然と謎解きの中心にいる。そこが巧いなと感じました。昭和十一年の東京という時代背景も、丁寧に描かれていて、読みながら その世界に浸れます。 管理職という立場上、複雑な人間関係の描写に特に共感しました。華族主人の失踪事件や、良家の少年の夜間行動など、一見すると社会的地位に守られているはずの人物たちが、それでも逃れられない運命や秘密を抱えている。そうした切実さが作品全体を貫いています。 難を言えば、短編三篇ということで各々の展開が少し駆け足に感じる部分もありますが、それでもシリーズ最終巻として申し分ない仕上がり。気軽に読める文庫のサイズで、でも深い。忙しい日々の合間に、こういう質の高い読書ができるのは本当にありがたいです。