夏と花火と私の死体

夏と花火と私の死体

乙一

出版社:集英社 出版年月日:2000/05/01

集英社 | 2000/05/01

3.50
本棚登録:2人

みんなの感想

エンジニアとして論理的思考に慣れた身としては、この作品の構成の巧妙さに思わず引き込まれました。死体という衝撃的な設定から始まりながら、徐々に明かされる真実の層の深さが秀逸です。 乙一のデビュー作とのことですが、まず驚くのは独特の語り口。一人称で語られる物語なのに、その視点の揺らぎが意図的に計算されているのが感じ取れます。エンジニア的に言えば、ロジックが完璧に組み立てられているのです。 内容はホラー要素を含みながらも、兄妹の関係性という人間ドラマが軸になっており、単なる怖さだけではない深い余韻が残ります。九歳の夏という限定的な時間軸設定も効果的で、その中に凝縮された物語の密度が高い。 ただ慎重に言うと、一部グロテスクな表現があるため、気になる方は事前に了解が必要かもしれません。文庫化されているので読みやすいですし、小野不由美の解説も本作の理解を深めます。 エンジニアの視点でも、文学的価値でも、どちらの角度からも楽しめる傑作だと思います。