うさぎ玉ほろほろ
出版社:講談社
出版年月日:2026/02/13
講談社 | 2026/02/13
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みんなの感想
江戸の菓子舗を舞台にした人情物語。直木賞作家による既刊の魅力を知っている読者なら、このシリーズの温かみと精緻な人物描写を期待するでしょう。本作も基本的な枠組みは同じ—菓子という媒介を通じて、親子や夫婦の関係、隠された想いが丁寧に描かれていきます。 ただ率直に言うと、今回はやや物足りなさを感じました。収録作の幾つかは、登場人物の心情や背景設定が説明的になってしまっている印象があり、これまでの作品にあった「引き」の強さが薄れているように思われます。菓子の描写や江戸情緒は相変わらず上質ですが、それだけではシリーズの継続読者の期待値には届いていない。 とはいえ、人間関係の複雑さや切実さを丁寧に拾い上げようとする姿勢は健在です。フリーランスとして日々様々な人間関係と距離感に向き合う私にとって、「石の衣」というモチーフはまだ何か語りかけてくるものがあります。期待値さえ調整すれば、静かに楽しめる一冊ではあるでしょう。