麦の海に沈む果実
講談社 | 2004/01/15
みんなの感想
最近、SNSで話題になってたこの作品、ついに読み終わりました。正直、期待以上の面白さでした。 三月の国という設定だけで既に興味をそそられるのに、全寮制学園という閉ざされた空間で次々と起こる怪異な出来事たち。転入生の理瀬を通じて、読者も彼女と一緒に謎の渦中へ引き込まれていく感覚が気持ちいいです。交霊会、失踪生徒、消えた本…これらの要素がどう繋がっていくのかという引っ張り感が途中で一気読みさせてくれました。 何より印象的だったのは、不思議な現象の描き方の繊細さ。ホラーっぽいのに不気味さより美しさが勝っている、という独特の世界観がいいですね。新社会人になってから疲れた脳も、この異世界観にすっと入り込めました。 ただ、終盤の展開があっさり気味に感じた部分があるのと、全てが明かされない部分もあるので、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。でも個人的には、その謎めいた余韻こそが、この物語の魅力だと思います。話題作の理由が分かる一冊です。
このところ、何か心がざわつくような物語が読みたくて、レビューを参考にしながら慎重に選んだ一冊です。 「麦の海に沈む果実」は、一見するとミステリーのようですが、その本質はもっと不思議で、もっと深いところにあるんだと読み進めるうちに気づきました。三月にしか転入できないという設定だけで既に引き込まれるのに、二月最後の日に現れた主人公・理瀬の視点から、学園内の謎が次々と明かされていく。図書館の消えた本、失踪した生徒たち、交霊会——どれもが「三月の国」という別の世界へつながっているような感覚。 著者の想像力の豊かさに驚きました。現実と非現実の境界が曖昧になっていく様子が、まるで自分もその世界に迷い込んでいるような没入感です。主婦になってからは、子どもたちが寝た後に読むことが多いのですが、この本は夜中に読んでいても恐ろしくなく、むしろ優しく包まれているような感覚。ラスト近くの展開にも満足できました。 ただ、少し難解な部分もあるので、読む人によっては印象が分かれるかもしれません。それでも、久しぶりに「もう一度読みたい」と思わせてくれた素敵な作品です。
最近、話題作をいくつか手に取っているなかで、この『麦の海に沈む果実』は予想外の面白さだった。全寮制の学園という限定された舞台設定に、交霊会だの失踪だの、一見すると奇想天外な要素が詰め込まれている。普通なら陳腐に感じてしまうかもしれない。だが、読み進むにつれて、その「不思議」がすべて有機的に結びついていく感覚が心地よかった。 主人公・理瀬の揺らめく心情が丁寧に描かれており、ミステリアスな世界観のなかにも人間らしさが息づいている。転入という単純なきっかけから物語が動き始め、図書館の消えた本、湿原の失踪事件と、謎が層状に積み重ねられていく構成も巧妙だ。最後まで読むと、バラバラだった要素がまとまる快感を味わえる。 ただし、象徴的な表現が多いため、一度の読了では完全には腑に落ちない部分もある。その曖昧さが、むしろ物語の深さを引き出しているようにも思える。現実と幻想の境界が揺らぐ、そういう不安定さが好きな読者にとって、この作品は確実に刺さる一冊だろう。