麦の海に沈む果実

麦の海に沈む果実

恩田 陸, 笠井 潔

出版社:講談社 出版年月日:2004/01/15

講談社 | 2004/01/15

4.00
本棚登録:2人

みんなの感想

最近、話題作をいくつか手に取っているなかで、この『麦の海に沈む果実』は予想外の面白さだった。全寮制の学園という限定された舞台設定に、交霊会だの失踪だの、一見すると奇想天外な要素が詰め込まれている。普通なら陳腐に感じてしまうかもしれない。だが、読み進むにつれて、その「不思議」がすべて有機的に結びついていく感覚が心地よかった。 主人公・理瀬の揺らめく心情が丁寧に描かれており、ミステリアスな世界観のなかにも人間らしさが息づいている。転入という単純なきっかけから物語が動き始め、図書館の消えた本、湿原の失踪事件と、謎が層状に積み重ねられていく構成も巧妙だ。最後まで読むと、バラバラだった要素がまとまる快感を味わえる。 ただし、象徴的な表現が多いため、一度の読了では完全には腑に落ちない部分もある。その曖昧さが、むしろ物語の深さを引き出しているようにも思える。現実と幻想の境界が揺らぐ、そういう不安定さが好きな読者にとって、この作品は確実に刺さる一冊だろう。